医院/歯科医院/病院の経営相談・コーチング・コンサルティングを行うMASパートナーズ代表 原聡彦が、日々の経営相談・コーチング・コンサルティング活動を通じて経営の現場から「学んだ事」や「気づいた事」を綴ります。
(相談内容)
近畿地方の「みなし指定」(診療所のみなし指定)を受けて通所リハビリテーションを運営している整形外科クリニックの院長からの相談です。管轄の行政から通所リハビリテーション(診療所のみなし事業所)の実地指導の連絡がありました。「みなし指定」の事業所には実地指導はないと聞いていたので安心と油断をしておりました。初めての実地指導なので不安が募ります。準備すべき書類や代表的案質問事項をお教えください。
(回 答)
【1】「みなし指定」の事業所の実地指導について
「みなし指定」の事業所は実地指導に入らないというのは都市伝説です。じつは「通所リハビリ」は、「みなし指定」でも人員基準にもとづく出勤簿やカルテ(利用者)、サービス記録、介護レセプトと、サービス記録のつき合わせは必ずあります。「所リハビリテーションの「実地指導要綱」(都道府県でくれる)にもとづいて、根拠法、根拠通達なども示しながら行われます。また、サービスごとの「事業所内の掲示」は、指導員が最初に見るので重要です。
下記に指導にともない提出を求められる書類と掲示書類をまとめましたので参考にしていただければと思います。
1 提出書類
・ 自主点検表(直近分の写し)
※管轄の都道府県か市町村がホームページでダウンロードできるようにしています。
・ 運営規程
・ 重要事項説明書、パンフレット、契約書等
・ 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表(実地指導月の2ヶ月前分を基本とされます。)
・ サービスの提供に関する調書(別添)
・ 通所リハビリテーション 規模別報酬の算定に関する調書
*加算体制届に係る「事業所規模算定表(参考様式2又は3)」でも可能です。
・ 緊急時、事故発生時、苦情対応等のマニュアル
*既に実地指導を受けた事業所については提示を求めることを基本とされます。
2 提示書類
(1)勤務体制及び介護報酬の請求状況等を確認するための書類
・ 従業者の勤務関係書類
(出勤簿、タイムカード等の勤務の状況がわかる資料)
(実地指導月の2ヶ月前分を基本とされます。)
・ 雇用契約書および辞令
・ 個人情報保護に関する誓約書
・ 資格証(写しでも可)
・ 苦情処理、事故発生時における対応状況のわかる資料
・ 研修実施状況のわかる資料
・ 介護給付費請求書、介護給付費明細書
(国保連請求控え)(実地指導月の2ヶ月前分を基本とされます)
・ 請求書又は領収書の控え(実地指導月の2ヶ月前分を基本とされます)
・ 前年度各月の延べ利用人数のわかる資料
(2)サービスの提供を確認するための書類
・ 居宅(介護予防)サービス計画書、サービス提供票
・ サービス提供の記録
【2】実地指導でよく質問されること
これまで実地指導に同席させて頂いた範囲で代表的な実地指導で指摘をうける事項を下記にまとめました。
・上記【1】の提示書類より職員の勤務実態を確認されます。勤務体制については予定と実績を別々に管理するよう指導されているケースが多いので予定表と実績表を別々に作成して頂く保管頂くことをお勧め致します。
・事故発生時の行政への報告がタイムリーになされている確認されます。例えば、利用者が転倒した場合は事故を記録して行政へ報告しているかチェックされます。また、利用者が転倒した場合の記録が「ヒアリハット報告書」に記録されている事が多いので「転倒した場合」は事故報告書に記載して行政へ報告することを通所リハに関わる職員全員で共有して頂くことをお勧め致します。
・実地指導では必ず施設見学をされます。その際、「利用者がおう吐した場合、どのような対処をされているのですか?」と問われるケースがあります。この質問に対する理想的な回答は利用者がおう吐された際に「おう吐物処理セット」が2~3人分所定の場所に準備されている事です。このように感染症予防対策がとられているかを必ずチェックされますので「おう吐物処理セット」「お漏らし処理セット」などをご準備頂くことをお勧め致します。
・リハビリテーションマネジメント加算(以下 リハマネ加算)を算定している事業所には加算の趣旨の理解と事務手順を理解しているか必ずチェックされます。社会保険研究所から発刊される介護報酬の解釈3(通称 緑本)に掲載されているリハマネ加算の事務手順の様式を使用して頂くことをお勧め致します。
2019年10月11日
<相談内容>
受付事務スタッフが10年間にわたりレジのお金を盗んでいた事が発覚しました。被害額はおそらく100万円ほどになっております。今後、弁護士など専門家とも相談して対処をしていく予定ですが今後、このような事がおきないようにするためにはどのようにすればよろしいでしょうか?
<回 答>
最近、受付スタッフが長期にわたってレジのお金を盗んでいた等のスタッフの不正に関する事で多くの相談を頂いております。スタッフが金銭トラブルを起こするのは職場風土や環境に起因するところが大きいと思います。本日は金銭トラブルを予防するための仕組みと職場風土環境づくりのポイントについて、お伝えしたいと思います。
1.日々のレジのチェックはダブル、トリプルチェックで行う仕組みをつくる。
重要なのは一人に任せないという事です。特に特定の人だけにレジ締めをさせないという事です。必ず、一人の目ではなく複数の目で日々のレジ(午前診、午後診終了後のチェックも含む)のお金のチェック、日計表などに確認印を押印するなどの仕組み(ルール)をつくってください。日々、誰がレジ締めをしたか確認者の名前を記載すること。当社では「窓口受渡表」を日々、記載するとともに、金銭を裏付けるレセコンの日計表を必ず印刷しておく事を徹底して指導しております。
2.レジのお金が合わなかった場合の原因追求は徹底的に行う風土をつくる。
極端な事をいうと、レジのお金が合わなかったから仕事が終われないぐらいの職場風土を作っておくとよいでしょう。弊社のクライアントではお金が合わなかったらレセコンの日計表とレジのクルクルシートをアウトプットして一人ずつのチェックさせるぐらいの徹底した原因追及をしていく職場風土を作って頂くよう指導しております。
3.未収管理は徹底し回収方法も決めておく。
未収管理はノートや表などで日々の未収金がいくらあるか把握できるようにしておく。また、回収方法もマニュアル化しておくことをお勧めします。
4.院長、院長夫人が内部牽制(ないぶけんせい)を行っていることを周知させる。
院長と院長夫人(奥様)がお金(未収金含め)の管理はきっちりしていることをスタッフには知らしめて頂く事をお勧めしています。「お金の確認はきっちりしているぞ!」の姿勢がスタッフへの牽制になります。
5.金庫に多額のお金はおかないようにする。
職員が金庫のお金を盗っていた、あるいは、クリニックを狙う窃盗団もいるので金庫管理をしっかりして頂きたいと思います。金庫には必要最低限のお金を置く。日々の窓口現金は、毎日でも取引銀行に入金するよう仕組み化することをお勧め致します。
以上、金銭トラブルを予防するための基本的なポイントをまとめました。金銭トラブルが起こらない仕組みと職場風土環境はスタッフを野放しにしないことからはじまり、日々のお金をチェックする仕組みをつくりあげることがポイントです。ぜひ、職員による金銭トラブルが防止できる職場づくりにチャレンジしてみてください。
2019年3月15日
近畿地方の外科系の有床診療所の院長からの相談です。
最近、警察から電話で当院の患者さんに関する照会が数件ありました。どのようなに対応すればいいか、お教えください。
質問1 警察からの電話で患者の病名などを問い合せがありました。患者情報を電話にて回答しなければならないのでしょうか?
回答1 電話照会は電話の相手が警察官かどうかの確認もできませんし記録も残りません ので、原則としてお断りすることをお勧めします。まずは公文書による照会を要求することをお勧めします。
質問2 警察署長から「捜査関係事項照会書」と題する書面が届きました。照会事項は、当院に通院している患者さんの「病名と通院期間」です。回答しなければなりませんか。患者さんの同意を得ずに回答した場合、個人情報保護法違反にならないでしょうか?
回答2 「捜査関係事項照会書」は、刑事訴訟法197条2項に基づく照会で公文書ですが、
任意捜査ですので医療機関には照会に応ずる法的義務まではありません。しかし、患者の病名や通院期間のように、カルテを見れば容易に回答できる事実の照会には、回答するのが一般的です。なお、この照会に対する回答は、個人情報保護法の「法令に基づく場合」に該当するので、患者の同意がなくても、同法違反にはなりません。
質問3 照会事項は、当院の患者さんBさんの「カルテおよびクリニックが採取した血液の検体」の任意提出です。Bは殺人事件の被害者であり、当院にてすでに死亡しているので、Bの同意は得られませんが任意提出に応じるべきでしょうか。
回答3 任意提出ですから、クリニックが応じないことも可能です。ただ、今回のケースでは、警察がBさんを被害者とする殺人事件の捜査を行っており、その証拠としてカルテおよび血液の検体を必要としているものと推察されますので、当院が任意提出することは、犯人を処罰することに役立つのでBさんの意思に反するものではないと考えられます。また、当院が拒絶した場合、警察は裁判所の捜索差押令状をとって差押えることも可能ですから、いずれ提出させられる可能性がありますのでこのケースでは応じて頂くことをお勧めいたします。
質問4 照会事項は、当院に通院する患者Cさんの「責任能力の有無」でした。
当院は、どう対処すべきでしょうか。
回答4 たとえ殺人犯であっても、責任能力が無ければ無罪になりますので、責任能力の有無の判定は刑事捜査において極めて重要です。そのため、捜査機関が起訴前に被疑者の責任能力を判断する手段として、簡易鑑定と起訴前本鑑定があり、通常、精神科や神経内科などの専門家に鑑定を依頼します。ところが、今回の照会は、外科医に患者の責任能力の有無について意見を求めようとするものですから、事実の照会の範囲を超えているように思います。したがって、「当院は外科であり責任能力の有無については判断できません」と回答することをお勧めします。
2019年3月13日
院外事務長として、医院経営コンサルタントとして、クリニックのクライアント様のミーティングをサポートする機会が増えております。現場のスタッフからは、ミーティングが退屈でつまらないとか、意味がないとか、ミーティングを嫌う言葉をよく耳にします。そこで、院内ミーティングを活性化させるポイント⓶と題してミーティングを活用して経営改善に役立てているクリニックのミーティングはどのようなにデザインされているかをまとめました。
1.ミーティングの型をつくる。
上記1~4を踏まえて、ミーティングの型、プログラムをつくれば、ミーティングをスムーズに進行することができます。例えば、議長あいさつ→誕生日スタッフの紹介→3分間スピーチ→前回の振り返り→委員会→議題→症例検討会→まとめ というようなミーティングのプログラムで進行している診療所もある。自院にあうミーティング方法を検討することをお勧めする。
2.ミーティングプロセスをつくる。
ミーティングプロセスを明確にすることでミーティングを進行する議長もやりやすくなる。ミーティングのプロセスは、テーマ→意見提案を引き出す(ブレーンストーミングなど)⇒結論に導く⇒まとめ(決定事項、次回までの宿題など)というプロセスを作っているケースが多い。スタッフの性格、院内の雰囲気にあわせて自院の独自のミーティングプロセスをつくってほしい。
3.進捗管理を行い問題解決となるアドバイスをする。
ミーティングで大切なのが進捗管理です。前回のミーティングの振り返りを行い、調べておく事、決めておく事、実行したことなど議題一つ一つに対して進捗確認しておく。院長が注意すべきところは結論を急がないこと!できなかった事に対して一方的に叱らない事!です。院長は事情をしっかり聴き、問題解決となる行動をアドバイスをすればミーティングが問題解決の場という事をスタッフが認識するようになります。クリニックで起こっている事は経営者である院長の責任という認識で真正面から問題に向き合えば自ずとスタッフから信頼をもってもらえる実例を多く見てきました。ぜひ、現場で起こっている問題と向き合ってください。
以上、弊社、ご支援先の事例もふまえミーティング活性化のポイントをお伝えしました。大切な時間を費やしミーティングをやるなら意味あるものにしたいですね。ぜひ!盛り上がるミーティングのプロデュースにチャレンジしてみてください。
最後までお読み頂きありがとうございました。
2018年3月13日