医院経営コンサルティング・経営改善支援|大阪・神戸・京都

医院/歯科医院/病院の経営相談・コーチング・コンサルティングを行うMASパートナーズ代表 原聡彦が、日々の経営相談・コーチング・コンサルティング活動を通じて経営の現場から「学んだ事」や「気づいた事」を綴ります。

クリニックにおける看護師の育成事例

クライアントの院長先生から「昨年、苦労して採用した看護師が1カ月未満に相次いで退職してしまった。」「新人ナースが思うように育たない」という看護師の育成についてのご相談をたくさん頂いております。そこで、今回は看護師の育成に熱心に取り組んでいる弊社クライアントの事例をお伝え致します。

1. 退職するスタッフの意見を集める
弊社のクライアントの大阪府の整形外科クリニック様では、退職するスタッフから職場の働きにくいところや先輩の指導方法について意見・考えを集めた結果、退職するスタッフの意見は下記のとおりとなりました。
<退職するスタッフの意見まとめ>
・指示だしが速すぎるし仕事を急かれるので、これまでできたことができなくなった。
・看護師の業務範囲が広すぎてレベルについていけない。これまでの経験を生かせない。
・聞きにくい雰囲気があり常に先輩方の顔色を見ながら仕事をするのは嫌だ。

  院長や指導した先輩の看護師からすると、クリニックの業務のやり方などスキルを伝えて看護師として早く仕事に慣れてもらうために指導してきたつもりでした。しかしながら、教えられる側からすると、スキルより心の不安のほうが大きいという事が上記の意見より把握することができました。

2. 心へのアプローチ
退職するスタッフの意見の中には院長及び指導した看護師にとってはとてもショックで耳の痛い意見もありましたが今後の看護師の育成の貴重な意見として捉えて新人看護師への心のアプローチをいかに実践するかを考えました。以下、実践した内容です。

①日々の声かけ
このクリニックでのスタッフ同士の声かけは「名前を呼ぶ+言葉がけ」と定義しています。例えば、出勤時は「〇〇さん、おはようございます」という事を声かけとしています。

②業務日誌を通じてコミュニケーション
新人看護師には1カ月間、業務日誌を書いて頂いています。この日誌には必ず指導看護師、新人看護師に関わる管理者が業務に関する悩みや不安を和らげるような励ましの言葉を書く事になっています。

③担当業務をもつ
このクリニックでは薬品や松葉づえなどの在庫管理、疾患パンフレットの管理を看護師の担当業務としております。入職後1週間で担当業務を受け持ってもらってクリニックでの役割を担ってもらいます。最初は先輩看護師と一緒に取り組むことでコミュニケーションをたくさん持つ事ができるので教える看護師、教えられる看護師の関係性が良好となりました。

④個別ミーティング
上記②の日誌の情報をもとに新人看護師の業務に関する不安、悩みに個別で対応するミーティングを行います。このクリニックでは入職後1週間~2週間は頻繁に個別ミーティングを行い新人看護師との信頼関係を構築しています。

⑤ナースミーティング
このミーティングでは月2回程度、看護師全員が集まって、院長の要望事項、診療プロセスの確認、業務上の不具合、困っている事などを情報共有しています。また、新人が苦手とする看護技術の習得に向けての全体研修を院長かリーダー看護師が全員に向けて技術指導を行います。

上記のアプローチを実践し続けた結果、新人スタッフから聞きにくい雰囲気という意見も少なくなりました。技術と心の不安も随時、解消できるようなコミュニケーションの機会を増やした結果、このクリニックでは1カ月未満の離職率は低くなりました。

やっとのことで採用した看護師に長く勤務してもらうために、自院で実践できる看護師を育成するシステムをご検討頂く事をお勧め致します。

「新人看護師が育たない。」「苦労して採用した看護師が1~3カ月いないで相次いで退職してしまう。」「看護部に一体感がない。」など自院の貴重な看護スタッフにお悩みのクリニックの院長、院長夫人はご相談ください。

2016年8月11日

 

院長のための人事マネジメント~ストーリーを語ること~

「なんで同じ日本人に日本語を話しているのに言葉が通じないだろう!?動かないのだろう!?」とスタッフとのコミュニケーションで悩む院長の声をたくさん聴きます。

人を動かす立場の人は立場上の違いを認め、それぞれの世代や背景に合った「コミュニケーション」をしていかなければなりません。今回は人を動かすためのコミュニケーションのひとつとして、「ストーリーを語ること」のメリットや基本的な作り方についてお伝えします。
1. ストーリーがもたらすメリット
メリットは大きく分けて3つあると考えております。
メリット1:聞き手が防衛反応や抵抗感を起こしにくく、受け入れやすい。
ストーリーは、相手に対してある「考え」を一方的に押しつけたり、強いることは基本的にありません。そのストーリーを聞いて聞き手がどのような「解釈」をするかは自由です。だからこそ、聞き手は身構えることなく、安心して聞くことができるわけです。

メリット2:話し手のストーリーを聞き手が疑似体験できるため共感できる。
 私たちは優れたストーリーを見たり、聞いているときには、その物語のなかに入り込み、主人公と同じ体験(疑似体験)をしています。そして、涙を流したり、笑ったり、喜んだりして、同じ感情を共有するわけです。この状態を「共感」と呼びます。

メリット3:単なる事実やデータと違い、記憶に残りやすい。
 記憶との関連です。突然ですが皆さんに以下の二つの質問をさせて頂きます。
質問1:昨年の日本のGDPの成長率は?
質問2:人生で初めてデートした相手の名前は?

いかがでしょうか?どちらもすぐに答えられるでしょうか?
何をお伝えしたいかというと、質問1はデータや数字についての質問であり、関心があったり仕事と深いかかわりがある数字であれば答えられると思いますが、多くの場合、新聞やニュースで見たり聞いたりしていても覚えているのは一時的で長期的な記憶には残りにくいと思います。一方、質問2の質問はおそらく答えられる方が大半だと思います。
 なぜかというと、初めてのデートというのは、ドキドキして、嬉しく、楽しく、私たちの感情が動く経験だからです。脳の仕組み上、感情が強く揺り動かされた経験というのは、優先的に脳が記憶しておいてくれるという自動装置になっています。
 感情を揺さぶる「ストーリー」を見たり聞いたりしたときには私たちの記憶に長くとどまることが可能なのです。
では、聞き手の感情を揺さぶるストーリーはどのように作ればいいのか?ストーリーの組み立て方をお伝えしたいと思います。

2. ストーリーの組み立て方
ストーリーについて下記のような定義づけを行っています。
 「ストーリーとはある主人公の経験、および、その経験が主人公や周囲に与えた影響や意味づけ・意義を含めて、その一連の流れを時系列で描いたもの」と定義しています。

 ハリウッドの映画であれ、おとぎ話であれ、組織の創業者の汗と涙のストーリーであれ、ストーリーの「基本の組み立て」は下記のようになっています。

<ストーリーの基本の組み立て>
 STEP1 現状:主人公が置かれている現状 
             ↓
 STEP2 事件:主人公の身になんらかの事件や困難がふりかかる
             ↓
 STEP3 危機:バランスを失い、現状のままではいられなくなる
             ↓
 STEP4 選択:葛藤のなかで主人公が望む方向に向かって選択・決断をして行動を起こす
             ↓
 STEP5 解決:何らかの変化や方向転換が起こり、結論に至る

現代の名経営者の一人として有名なジャック・ウェルチ氏は「あなたの最大の特徴は何ですか?」と問われ、「私はストーリーを伝える方法を知っているだけのこと」と答えています。名経営者であればあるほど、「ストーリー」の重要性を深く理解しており、ストーリーを語ること」を最大の武器にしていることがうかがえる言葉です。

組織で語られるストーリーは明確な「教育的見地」を持って語られます。言い換えると、スタッフに「こういう行動をとってほしい」「こういう理念を理解してほしい」「この経験から、こういうことを学んでほしい」という意図が明確にあります。そこに誰もが理解しやすく、イメージがわくような「ストーリー」を介在させることで共感を喚起します。共感は浸透のスピードを速めます。ストーリーはメンバーの意識や行動に変化を起こすための「触媒」の役割を果たしているのです。
強い組織のリーダーは例外なくストーリーを語る達人です。組織が経験してきた成功と挫折の物語、あるいは、自分の生々しい経験を語ります。そして、そのストーリーを通して、なぜその理念・価値観が大事なのかということを伝えます。ぜひ、クリニックのリーダーとして想いのこもったストーリーをスタッフに語る事にチャレンジして頂きたいと思います。

2016年1月25日

 

診療所の承継開業のポイント

今回は、承継開業をご検討されている先生に必ずチェックして頂きたい事項をお伝え致します。

(1)承継開業に際して必ずチェックして頂きたい事項
1.譲渡価格(営業権など)の確認
簡単にいうといくらでクリニックを購入できるのか。譲り渡し側の価格を確認しておくことです。譲渡価格は個人立のクリニックと医療法人のクリニックでは変わってくるので、税理士、コンサルタントなど専門家を交えて確認して頂きたいと思います。

2.簿外債務の有無の確認
簿外債務とは貸借対照表上に記載されていない債務のことです。クリニックにおける代表的な簿外債務は現在勤務している従業員の退職金や、現在契約中の医療機器などのリース契約です。税理士などの専門家を交えて必ず簿外債務の有無の確認をして頂く事をお勧め致します。

3.現在の従業員の雇用条件
従業員の雇用継続の有無を決めるために雇用条件を雇用契約書や労働条件通知書などでご確認頂く事をお勧め致します。退職金の有無を確認し退職金を支払う事になっている従業員を抱えるクリニックを承継する場合は、雇用継続なら承継前までの雇用について払うべき退職金を見積もり、営業権から差し引きなど検討が必要です。

4.医療機器などの承継の有無と動作確認
医療機器、器具備品などの減価償却資産の承継をどうするのか。減価償却資産明細書をもって承継の有無を記載することをお勧めしている。承継する医療機器、レセコンなどは必ず動作確認を行う事(特にエックス線装置を承継する場合は業者に線量の測定を実施する)を必ず実施してもらうようにしています。承継して医療機器などが使えないとなるとどうしょうもありません。

5.空調、ガス、水道の確認
上記4と同じです。承継前に必ず業者に確認してもらうことをお勧めしております。
また、コンサルタントの手数料や業務範囲を確認して期待している事項を実施してもらえるのかをあらかじめご確認ください。

上記の1~5項目は最低チェックすべき事項です。承継後に不具合が発生しても、どうしようもありません。承継前までに専門業者に必ずチェックしてもらうことをお勧めします。

(2)承継開業 検討必要書類
上記(1)のチェックを行うために下記の書類をお求めください。

①決算書・確定申告書3期分
②減価償却資産内訳書 3期分
③勘定科目内訳書・総勘定元帳3期分
④決算届、役員変更届(医療法人を承継する場合)
⑤保健所へ提出した書類控え(診療所開設届など)
⑥厚生局へ提出している書類(保険医療機関指定申請書、診療報酬施設基準など)
⑦直近の経営状況のわかる書類試算表・損益月次推移表、レセコン帳票(保険種別件数表・診療行為別集計表・疾患別件数集計表)
⑧建物賃貸借契約書(テナントの場合)
⑨平面図・内装写真
⑩各種契約書・リース物件一覧

(3)承継する際の留意点
1.個人立のクリニックを承継する場合は保険医療機関の指定にあたり、切れ目の無い診療を行うために各行政官庁と必ず事前相談を実施してください。

2.クリニックの売買価格および賃貸借契約については、可能な限り、公正証書もしくは弁護士を介在させ、リーガルチェックを行い決定事項について書面で残して頂くことをお勧めします。
    
3.他人との承継を行う前の交渉に当たっては、秘密保持契約を締結する。

(4)承継開業を行う際の情報収集
最近では医療機関専門のM&A専門業者も増えています。M&A専門業者のサポート内容はさまざまで依頼する前には依頼したい事項について事前確認を行い期待している事ができるかどうかを確認したうえで正式に依頼をして頂きたいと思います。
弊社では多くの患者さんから選ばれているクリニックの承継案件のご紹介もさせて頂いております。例えば、大阪府で年商1億円レベルの専門診療科のクリニックなど優良な案件をご紹介しております。医療法人の分院展開をお考えの医療法人の理事長先生、第三者から承継して新規開業を目指したい先生方をサポートしておりますのでご相談ください。

2015年7月16日

 

院長夫人コーチング クライアント様の実践事例~スタッフ教育のすすめ~

「最近のスタッフは常識がない!普通の対応ができない!」などスタッフの常識レベルに疑問を持つ院長先生、院長夫人の声をよく耳にします。このような声をお伺いした時に私は必ず「フツウという自分基準な思い込みを持っていませんか?」と質問させて頂きます。

今回は私どもの院長夫人コーチングのクライアントでクリニック経営のマネジメントに真剣に取り組んでいる院長夫人が実践している「スタッフ教育のすすめ」をお届け致します。

読者のみなさまのクリニックには雇ってびっくり、あっとおどろく言葉遣いや、態度のスタッフはおられませんでしょうか?また、入職後、ずいぶんたつのに、ある時、このこと知らなかったのー?!となるスタッフはいかがでしょう?

言葉遣いや態度は良好な人間関係を構築していく上で、重要なポイントとなることは言うまでもありません。だから、どうしてもそこがかみ合わないスタッフは遠ざけてしまいがちです。結果、叱咤激励の機会もコミュニケーションの機会もへらしてしまうことになります。

そこで、心においておこうと経験からおもうことが、『自分の口で伝えていないこと、教えていないことがわかっていないからといって、不満をもたない』ということです。
多くの院長先生やご夫人、時にはリーダーとなっている方も、なぜ日本語から教えなければいけないのか、家庭教育や学校教育はどうなったのかと嘆かれることと思います。
医療機関独特のことは教えても、あいさつから?!敬語から!?そこから!?うそでしょ!!!というご意見も当然と拝察します。

しかし、教えていないことを「こんな場合はふつう、こうするとかこう言う」という自分基準な思い込みは、あとでうんざりする結果となりがちです。教えずに、通り過ぎたスタッフは、必ずと言ってよいほどボタンを掛け違えた関係性となり、退職を申し出られることが私の経験上は多いように思います。これでは、お互いがどれほど時間を無駄にするかしれません。

言わなくてもできてほしい!スタッフに指導はおまかせといった院長先生も少なくありません(お気持ちはよくわかりますが・・・)。これからの経営者に求められる事はお給料を払って学ばせる。医療機関も含め、企業は今やOJTを行なう教育機関でもあるのだと心得た方がよさそうです。

「フツウ」というこちらの基準でものを考えていても時間をムダにするばかりです。
雇用側は、給与を支払うだけでなく、教育指導するという責任も果たすことが大切です。
そして、教えていないことができるかどうかではなく、教育したことができるかどうかの結果に対する評価をする必要があると思います(教えなくてもできるスタッフもいます。でも、稀です)。
教育に力をいれることによって、思わぬ成長を遂げてくれるスタッフに出会うことができますし、スタッフとの関わりを増やすことで、スタッフ側の思いも知ることになり、そんなスタッフにこちらが育てられていきます。

でも、不思議と教育を丁寧にしていて後悔することはないのです。それは、残念な思いをすることがあっても、残って頑張ってくれるスタッフの成長があり、またそのことによって少し練られた自分が感じられるからだと思います。

「スタッフの教育」について読者の皆様のクリニックに合う教育のやり方を考えて頂き実践して頂きたいと思います。最後までお読み頂きありがとうございます。感謝!

2014年4月17日