<相談内容>
大阪府で開業2年目の整形外科クリニックの院長からのご相談です。
「毎日、始業時間の10分前には出勤していたスタッフが、ある日から突然連絡もなく急に出勤しなくなり、こちらから電話をしても連絡が取れなくなってしまいました。出勤しなくなってから1カ月経過するため解雇として手続きを進めたいのですが、どのようなことに気をつければよいでしょうか?」という相談をお受けしました。
<回 答>
スタッフが出勤せず、また連絡も取れないからといって、クリニックが当該スタッフに何も伝えずに解雇することにはリスクが伴います。このような場合、スタッフへの解雇の通知方法として、公示送達があります。しかし、時間と手間を要するため、実務面では就業規則などに一定以上の欠勤をした場合に自然退職となる旨の記載をし、黙示の退職の意思表示があったとみなして運用する方法が考えられます。
1.解雇はできるのか?
就業規則など、自然退職の規定がないと、解雇する事はリスクが伴い解雇は難しいという結論です。職員が突然無断で出勤しなくなり、勤務を続ける意思があるのかわからないというようなことが稀に発生します。このようなとき、まずは電話をした上で、出勤や連絡することを要請する手紙の郵送、自宅への訪問、身元保証人への連絡等あらゆる方法で職員に連絡をするように努めることが重要です。しかし、連絡が取れないまま、ある程度の期間が経過したような場合には、解雇を検討することが考えられますが、これにはリスクが伴います。解雇は、クリニックが当該職員に雇用契約を終了する意思を通知し、到達することが必要とされているためです。したがって、今回のように連絡が取れなくなってしまった場合には、その通知ができず、解雇することが難しいと考えられます。
2.公示送達とは?
職員と連絡が取れず、解雇の通知を行うことができないとき、法律上の手続きとして公示送達という方法があります。公示送達は簡易裁判所に申し立てをし、その内容を裁判所の掲示板に掲示することによって行われ、この掲示から2 週間を経過した時点で、相手方に解雇の意思が到達したとみなすという制度です。
3.実務的な対応は?
上記2の公示送達は時間と手間を要します。したがって、実務としては就業規則等に、一定期間以上の無断欠勤を行った際は(黙示での退職意思とみなして)退職とする、という旨の規定を設け、一定期間経過後、自動的に契約が終了する、自然退職として取り扱う方法がよく行われます。ただし、実際に雇用契約を終了することについて何も知らせていないと、後日、退職の取り扱いが不当であるとして争われてしまう可能性があります。そのため、就業規則に自然退職となる旨の記載をした上で、到達しない可能性はありますが自然退職となることや退職日等を内容証明などの方法で通知し、連絡を取ろうとしたことの経過や証拠を残しておき、退職の扱い自体の有効性を高めるようにしましょう。
開業年数を重ねると、人事問題ではいろんなご経験をされると思いますし、労働基本法などの労働にまつわる法律や医療従事者の働き方が10年前の内容とは大きく変わってきています。まずは自院の人事に関する規定と書式を専門家と相談しながら整備して頂き、当院の現状にあう内容にして頂くことをお勧め致します。
2021年11月8日